本紙評論家の小塚崇彦氏(28)がデータを基にオリンピック(五輪)フィギュア競技の見どころを語る第3回は男子シングル。4年に1度の五輪では、いかにピークを合わせられるかが勝負の鍵を握る。金メダル候補の羽生結弦(23)、宇野昌磨(20)、ネーサン・チェン(18=米国)3選手の近年の得点推移を基に、五輪でのポイントを指摘した。
羽生は、ソチ五輪後の2シーズンは中盤の12月にピークが訪れ、3月の世界選手権に合わせることが出来なかった。だが、昨季は試合を重ねるごとにプログラムを磨き、世界選手権ではシーズン合計ベストで優勝した。
小塚 羽生は、昨季のような良い流れを作りたかっただろう。だが、ケガでそのリズムが切れ、五輪まで約4カ月実戦感覚が空くことになってしまった。12月末の全日本選手権から、翌3月末の世界選手権まで3カ月間を空けて試合に臨む例は過去にあるが、いずれもピークを合わせられていない。昨季4大陸選手権から世界選手権へといいリズムを作ったように、出場チャンスがあった4大陸選手権や五輪団体など実戦を挟むのが望ましい。ケガの状態をギリギリまで見極めていると思うが、最後まで諦めないでほしい。
宇野は「3選手の中でも短いスパンで試合数を重ねていくタイプ」。その中でも昨季と今季では、違うカーブを描く。
小塚 安定感があり、徐々に調子を上げていった昨季と比べ、今季は初戦でいきなり319点と高得点を出す半面、270点台があったりと波が激しかった。4回転ジャンプの構成を変えるなど演技が定まらなかったのが原因だ。
五輪前最後の実戦4大陸選手権では、細かいミスはあったものの、五輪本番の構成でSP、フリーともに完成度の高い演技を披露し、手応えをつかんだ。
小塚 五輪団体に出場するなら個人戦まで間が短いが、宇野は試合を重ねて良くなるタイプ。問題ないだろう。一方、チェンは1戦1戦に入念に準備し、臨むタイプ。短いスパンでの試合感覚に慣れていないので、団体がある場合、どう左右するか。個人戦にかけるのであれば、出ない方が合っているだろう。
選手は「願掛けのようにあの時はこうだった、と自分のいいイメージを思い描いて、試合に臨む」と小塚氏。強い気持ちで心身ともにピークを合わせた選手が五輪の頂点に立つ。【取材・構成=高場泉穂】(おわり)
- 羽生結弦(17年11月9日撮影)
- 1月、4大陸選手権の男子SPで演技を行う宇野