先日、JFL(日本フットボールリーグ)の試合を観戦した。私にとって人生で初めてのことだった。仕事の関係で関わったのが、きっかけだ。
JFLといえば、鈴鹿ポイントゲッターズに55歳のFW三浦知良選手が加入したことで多くのファンが注目していると思う。Jリーグ(日本プロサッカーリーグ)ではない。J1、J2、J3の次に来るのがJFL。つまり4部にあたる。
今回観戦したのは、シーズン第2節のCriacao Shinjuku(クリアソン新宿)対FC神楽しまね。クリアソン新宿は昨年、関東1部、全国地域チャンピオンズリーグで優勝し、入れ替え戦を制してJFLに昇格したチームだ。
プロ契約の選手はおらず、所属する現役アスリートの多くが株式会社クリアソンの社員として仕事をしながら競技を続けている。来年2023年のJリーグ加入を目標としている。
JFLにはこのようにJリーグを目指すチームもあれば、ホンダロックSCのように企業チームでアマチュア日本一を目指しているチームもある。そこも面白い部分だ。
ではJFLからどのようにJリーグ、つまりJ3に昇格できるのだろうか。「Jリーグ入会の手引き」には、JFL4位以内、かつ百年構想クラブのうち上位2クラブとの記載がある。この百年構想クラブとは、「Jリーグ(J3)への参加を目指すクラブとして、Jリーグが一定の審査を経て認定するもの」であるという。都道府県リーグでも申請できる。その審査基準としては、<1>競技基準、<2>施設基準、<3>人事体制・組織運営基準、<4>法務基準、<5>財務基準とされている。
ちなみにクリアソン新宿は、この百年構想クラブ認定を昨年2月に受けていることから、今季のJFLで4位以内に入ればJリーグ昇格が見えてくる。厳しい条件ではあるが、この厳しさだからこそ、Jリーグのブランドが作りあげられているとも思う。
こうして書いていると、オーストラリアのラグビーのことが頭に浮かんできた。ユニオンリーグでディビジョン5まであるのだ。ディビジョン5は、いわばどんな人でも加入できる。誰にでもラグビーをするチャンスがある。
完全に同じではないが、JFLのホームページには「JFLでは企業チーム、Jリーグ入会を目指すクラブ、地域のアマチュアクラブなど様々な人々が関わり、いろんなチームがしのぎを削っています。そこには、それぞれの夢、個性、絆があります。サッカーを愛するプレーヤーが全国やそれぞれの地域に情報を発信できる舞台。JFLはそのようなリーグになることを目指しています。」と記載がある。
日本のスポーツ界はサッカーから学べることが多くあるように思う。強いが偉いのではない。でも強くあることは、工夫や努力、先駆的な取り組み、マネジメントなどさまざまな要素があるからだ。よく「過程が大事だ」「競技を通して成長するのが目的」と言われる。私自身も言われてきたし、きっとスポーツは結果だけではない教えもあるのだが、結果的に「人生」という長い視点、長期的な視点が少ないようにも思う。勝利のために努力することはさまざまな角度から人を成長させ、活躍する選手はデュアルキャリアを歩みながら、進んでいくように、スポーツ界も変容を見せつつある。
トップアスリートだけがアスリートではないし、「スポーツはみんなのもの」というオープンな場所も提供していかなければならない。「なぜスポーツが必要なのか」「トップアスリートの社会価値は何か」一度、フラットな議論をしていく必要がありそうだ。
(伊藤華英=北京、ロンドン五輪競泳代表)