今回は初めて、大学生のチームで活躍する留学生にインタビューを行った。京都産業大ラグビー部3年、アサエリ・ラウシ選手。1月に決勝が行われた大学選手権でベスト4に進んだチームの主力選手だ。
準決勝で優勝した帝京大に惜しくも7点差で敗れはしたものの、最後まで観客席を沸かせた素晴らしい試合だった。その中でも、スクラムで帝京大と互角以上に戦っていたロックのアサエリ選手。今月発表された今年度の関西大学リーグのベスト15にも選ばれた。まだあどけなさが残る青年が抱く、ラグビーへの思いを聞いた。
アサエリ選手はトンガ出身。9歳からラグビーを始めた。14~15歳のときから「日本に行ってプロラガーマンになりたい」という夢を抱くようになったという。
高校から日本に留学。日本航空石川高でメキメキと頭角を現し、京都産業大への進学を決めた。その理由は将来を見すえたものだった。「一番きつい練習をするチームが京都産業大学だ」と先輩から聞き、プロになるためにはその練習をして、強さを身につけなければいけないと感じて、進学を決意したのだ。
当時の監督は大西健氏。2019年までチームを47年間率いた名将だ。入学したシーズンに大西監督から言われた言葉が、ずっと心に残っているという。
「きつい時にこそ、頑張りぬくことができたら、必ず強くなる」。
恩師からの言葉をかみしめながら、ここまで厳しい練習にも積極的に取り組んでこられていると話した。
今年度は関西大学リーグで23季ぶりに優勝し、大学選手権もベスト4まで勝ち上がった。その要因について「何よりチームワークが素晴らしかった」と言った。定めた目標から誰1人として逃げず、全員が同じ方向を向いて進めていたという。
「何より言葉の壁を感じさせないくらい、みんなでコミュニケーションを取り合っていた」。正直、日本語は流ちょうとはいえないアサエリ選手だが「チームの中でそれを笑う選手は1人もいない」と話した。
ラグビーの練習や、チームメートとの関係を築くことに苦労はないという。しかし、それ以外の生活の部分では、苦労ばかりだと頭を抱えた。プロのアスリートのように通訳がいてくれるわけもなく、すべてを自らで行わなければいけない。
ラグビー、生活、勉強。スポーツだけで終えられないアスリート留学生だからこその苦労があるという。家族にも会いたくなる。でも、故郷で誓った思いは忘れていない。「トンガではラグビーはメジャースポーツだから、プロ選手になって家族を喜ばせたい」。日本へ留学させてくれた家族のために、プロになって恩返しがしたい。
その夢の舞台をつかむため、まずは京都産業大で多くのことを身につけたい。「今年勝てなかった大学選手権で優勝することが今の最大の目標です」。そう強い思いをもって挑む大学ラストイヤー。アサエリ選手にとって、最高な1年になることを願っている。
最後に、あなたにとって今やりたいことは何?と聞くと、「日本一をとること!でも、その前に勉強がんばって卒業しなきゃ」と笑顔を見せた。
(プロラクロス選手・スポーツアンカー 山田幸代)