あっという間に今年も9月。秋の訪れを感じる日々も増え、夏の全国大会ラッシュも大詰めになってきた。
9月7、8日にかけては、東京アクアティクスセンターにおいて「日本学生選手権水泳競技大会」が開催された。今大会は「日本選手権」と同様、記念すべき100回目。飛び込みプールの隣では競泳の試合も開催されており、会場中が学生の声援と熱気に包まれた。
1日目に行われた男子3メートル。決勝ラスト1本まで接戦を繰り広げたのは伊熊扇李(日本体育大学)と二羽倖駕(近畿大学)だった。
両選手ともに国際大会を経験している実力者。難易度の高さも世界で戦える技をそろえている。
決勝の後半戦は、この2人の戦いが見ものだった
予選を1位で通過した伊熊。決勝では、2本目を終え4位と苦しい出だしだった。しかし3本目の109C(前宙返り4回半・抱え型)で87.40を獲得すると一気に順位を上げ、トップに躍り出た。そこに5154B(前宙返り2回半2回ひねり・えび型)で反撃した二羽。ジャッジの平均が7点という好調な演技で、伊熊にプレッシャーをかけた。
同じ技で4本目を迎えた伊熊だったが、61.20点と点数を伸ばしきれず。点差は1.30に縮まった。5本目は2人とも70点を超える完成度の高い演技で、何とか伊熊が逃げ切るかたちに。
ほぼ点差の無い中で迎えたファイナルラウンド。最終演技は「失敗した方が負け」という緊張感に包まれた。難易度3・8の109C(前宙返り4回半・抱え型)の大技で賭けに出た二羽。それに対し、伊熊は難易度3.6の207c(後ろ宙返り3回半・抱え型)で勝負。どちらも高難度の技なだけに、観客席は大盛り上がり。先に板の上に登場したのは二羽。予選でミスした演技ということもあり、緊張の面持ちだった。しかし、やるしかない勝負の1本。その気持ちが演技として発揮され、74・10点を獲得した。メダルの色は伊熊の演技次第となった。伊熊も最後の力を出し切るような力強い演技を見せ入水。しかし、わずかにミス。点数は63・00にとどまり、最後の最後に逆転を許してしまった。伊熊にとっては悔しい結果となったが、素晴らしい戦いだった。
今後の飛び込み界をけん引していくだろう2人の選手。ジャッジをしながら、とてもワクワクさせてもらった。
今大会では、ジャッジの他にも表彰式のプレゼンターをさせてもらった。私も大学時代、女子高飛び込みで4連覇をした過去がある。しかし、それももう15年も前の話。飛び込みにささげた懐かしい学生時代を思い出しながら、メダリストたちに花束を手渡した。同じタイミングで競泳のプレゼンターをつとめたのは、元日本代表の中村礼子さんと宮下純一さん。2人とも同じ時代に、オリンピックやさまざまな国際大会でご一緒した先輩アスリートだ。礼子さんとは北京オリンピックで同部屋だった思い出もある。思わぬ久々の再開に、昔話にも花が咲いた。
インカレが幕を閉じ、今週末の国民スポーツ大会がいよいよ今年最後の全国大会。会場となる佐賀県でも熱い戦いを期待している。(中川真依=北京、ロンドン五輪飛び込み代表)