<全国高校バスケット選抜優勝大会:札幌山の手80-73山形商>◇女子決勝◇28日◇東京体育館
日本一だ!
連覇だ!
2冠だ!
札幌山の手(北海道)が山形商に逆転勝ちし、2年連続2度目の優勝を飾った。連覇は史上4校目で北海道勢では初、山口国体との2冠も達成した。日本代表の長岡萌映子主将(3年)が39得点と爆発し、大会得点王に輝くなどチームをけん引。スーパー高校生の活躍で、最強軍団が高校バスケットボール界の歴史をまたひとつ塗り替えた。
長岡がチームメートとともに、応援席に向かって頭を下げた。スタンドから飛び交う拍手と歓声。顔を上げた瞬間、エースの目に大粒の涙があふれた。ユニホームで何度ぬぐっても、込み上げてくる感情を抑えることはできなかった。「去年もうれしかったけど、自分たちの代で優勝できたことが何よりもうれしい」。充実感に満ちた表情で、胸の内を明かした。
自分の役目を全うした。一進一退の攻防から51-51で迎えた第3クオーター(Q)の6分47秒。空中でパスを受けたままゴールするアリウープを決めてリードした。7点差をつけた第3Qだけで15点を挙げ、一気にチームを乗せた。第4Qも11点。ゴール下での素早い身のこなし、細かなステップ、巧みな読み。勝負どころで得点力を発揮し、粘る山形商を突き放した。「競っている中、誰かが点を取らないといけない。ここで抑えられたらチームが終わり。自分がいくしかないと思った」と冷静に振り返った。
堂々の2年連続得点王だ。準々決勝の東京成徳大高(開催地)戦で、大会タイの1試合51得点をマーク。全5試合で計204得点を挙げ、1試合平均41得点はいずれの試合でもチーム全体の約半分の得点だった。2位に96点差をつけ、高校生の枠を超えた圧倒的な数字で他の選手を寄せ付けなかった。
悔し涙が、うれし涙に変わった。忘れもしない1年生で出場した高校選抜。長岡は大会期間中、上島正光コーチ(68)に涙が枯れそうになるほど怒られ続けた。プレー中はもちろん、宿舎での7時間ミーティングでも、その言葉は長岡に向けられた。上島コーチは「毎日泣かしていた」と冗談交じりに話したが、期待の裏返しでもあった。「あの時はプレーも全然できなかったのに、見捨てないで、徹底的に言い続けてくれた。最後まで教えてくれた」と長岡は振り返る。
約1年半後、日本代表に選出されるまでに成長した。上島コーチは「入学した時はある程度まではいくと思ったけど、代表に入るとは思っていなかった」と3年間の成長に目を細めた。昨年は高校3冠に導き、今年は2冠を成し遂げた。これまで流し続けてきた涙の数だけ、強くなれた。
来季はWリーグの富士通に入団する。再び日本代表としてプレーする可能性も高い。「まだまだ上島さんに言われたことができていないので、しっかり通用するように、残りの時間で練習したい」。高校NO・1の称号を手にした超高校級プレーヤーが、有終の美でラストゲームに幕を下ろした。【石井克】
◆最近の女子歴代得点王
過去10年に限れば、2年連続得点王に輝いた長岡の204点が最多。倉敷翠松(岡山)のバナ・ジョが06年にマークした185点が続く。昨年、長岡が2年生で記録した176点が3位、4位は01年に桜花学園(愛知)の河恩珠がたたき出した169点で、5位が09年の桜花学園・渡嘉敷来夢の161点。いずれも試合数は5。
◆高校選抜の連覇
女子の過去最長は96~01年に、桜花学園(愛知)が名古屋短大付時代を含めて6連覇を達成。桜花学園は3連覇、4連覇の経験もあり、42回の大会で17度の優勝を誇る。87年に昭和学院(千葉)、06年には中村学園女(福岡)が連覇しており、札幌山の手は史上4校目。男子の過去最長は95~98年の能代工(秋田)の4連覇。ほかでは洛南(京都)が3連覇、仙台(宮城)が2連覇している。