<高校ラグビー:東福岡36-24東海大仰星>◇7日◇決勝◇花園
最強V3だ。東福岡が、東海大仰星(大阪第3)を下し、史上5校目の3連覇を飾った。前半に攻撃的な守りからトライを重ねて主導権を握り、そのまま押し切った。大会通算292得点は、2年前に同校が作った「274」の大会記録を塗り替える新記録。1年からレギュラーのフランカー木村貴大主将(3年)とFB藤田慶和(3年)を軸に、谷崎重幸監督(53)が作り上げたチームが、圧倒的強さで花園を制覇した。
3連覇を祝うように3度、宙を舞った。笑顔満開の選手たちの手に身をゆだねた谷崎監督の目が潤む。「うるっときましたね。(両校優勝の)昨年は、彼らも胴上げができなかったですから。喜んでいる姿を見た時に少し、ね」。1年前は笑顔なき優勝。今年は違う。得点の大会通算記録を塗り替える最強Vで3連覇を決めた。「3年間、うれし泣きしかないです」と主将の木村は笑って言った。
最後の関門も、立ち合いの強烈なぶちかましで突破した。PGで先制した直後の前半5分、キックオフから相手が回そうとしたボールをWTB中野がインターセプト。50メートルの独走トライを決めた。伏線は守り。相手にボールがあっても、前に出る攻めの守備でチャンスを奪った。「ボールを持たない攻撃というのもある」と谷崎監督。選手に教え込んできた「ヒガシ」伝統の攻撃的守備が仰星を粉砕した。
公式戦負けなしも「80」まで伸ばした。谷崎監督は「無形の強さ」と表現する。「監督の指示ではなく、選手がピッチの中で判断して動く力をつけなければいけない。形がないと相手も対応できないですから」。試合での判断力を高めるため、選手に与えるのは自由。門限も消灯時間もない。「何時に寝なければならないか、意味が分からなかったら同じ。すべては自己責任」。指示待ちではなく、自分で考えて動く。徹底した方針が、強烈な個をチームにしていった。
以前は指示する監督だったという。「負けたら『何で言った通りにしないんだ』と」。99年に夫人を38歳の若さでがんで亡くし、1男2女が残され「子育てをしたんですよ」。学校の先生に「親の代わりはいないんです」と言われ、01年から3年間家族でコーチ留学のためニュージーランドへ渡った。その時に「間違い」に気づいたという。「心技体の最後は心。心がぶれたら技術もぶれる」。その心を育てるため、押しつけから自主性へ。方向転換から、負けないチームは継続されてきた。
「負けない」記録はどこまで伸びるのか。「負けた時の方がニュースになる。すごいことですよ」と谷崎監督は苦笑いした。木村主将は、引き継ぐ後輩へ「『負けてもいいよ』と言ってあげたい」。ノーサイドの笛が鳴った瞬間から、4連覇への戦いは始まった。【実藤健一】