<高校総体:競泳>◇20日◇男子100メートル平泳ぎほか◇新潟・長岡市ダイエープロビスフェニックスプール

 リオの星、山口観弘(17=鹿児島・志布志)が、100メートル平泳ぎでも驚異の高校新記録をマークした。得意の200メートルで五輪銅メダル相当の快記録を出し勢いに乗る山口は、100メートルも1分の壁を破る59秒56でゴール。自ら持つ1分0秒58の高校記録を大幅に更新するとともに、ロンドン五輪5位相当の日本歴代3位のタイムで両種目で世界を狙える実力があることを示した。

 山口はタイムを確認すると、コースロープに座って右手を突き上げた。「59秒台の真ん中で泳ぐ」と宣言した通りの59秒56。先月の鹿児島選手権で出した記録を、わずか1カ月で1秒以上更新。1分の壁を切り「世界が近づいたことを実感した」と胸を張った。

 もともと200メートルが得意で、100メートルは「難しい」と話していた。所属する志布志DCのプールは深さが1メートルしかなく、飛び込みもできない。スタートとターンが課題で、短距離には向かなかった。しかし、昨秋から東京で練習するようになって「スタートとターンの技術がついた」。この日もスタートから飛ばし、前半50メートルを「8秒台前半で」という狙い通りに28秒14でターン。後半一気の加速で2位以下を引き離した。

 尊敬する北島の泳ぎが刺激になった。ロンドン五輪200メートル、ラストで失速したものの序盤の泳ぎは世界新ペースだった。「積極的なレースを見て、康介さんの意志を継いでいこうと思った」。前日には本職でない背泳ぎで高校新を出した親友の萩野から「今日の主役はもらった」と言われた。「だから、負けないように頑張らなきゃと思いました」と話した。

 五輪日本代表の平井ヘッドコーチは「すでに200メートルは世界のトップレベル。ただ100メートルはキャメロン(ファンデルバーグ)が強いからなあ」。山口も「200メートルの目標は世界新、100メートルはとりあえず康介さんの日本新」と話す。それでも北島のように両種目で世界を狙いたい気持ちは強い。「だって200だけじゃ、つまらないでしょ」。泳ぐたびに世界に近づく17歳。山口の可能性は限りなく広がっている。【荻島弘一】

 ◆山口観弘(やまぐち・あきひろ)1994年(平6)9月11日、鹿児島県志布志市生まれ。5歳から志布志DCで水泳を始め、平泳ぎ一筋。昨年4月に100メートルで北島康介の持つ高校記録を塗り替え、今年1月には200メートルでも高校記録をマークした。4月の日本選手権では両種目とも派遣標準記録を切ったが、3位で五輪出場を逃した。県立志布志高3年で、来春から北島を育てた平井伯昌コーチが指導する東洋大に進学予定。174センチ、67キロ。