10月22日はイチロー氏の誕生日です。日米通算4367安打を放ったレジェンドも今年で51歳。ヤンキース時代こそ違いましたが、オリックス・ブルーウェーブから始まり、5年前の2019年(平31)3月21日にマリナーズで引退するまで背負い続けた背番号「51」と同じ数字の誕生日を迎えました。

ここに載せたのは96年1月1日付日刊スポーツ大阪版の1面の写真です。躍る見出しは「イチロー 51歳現役」。当時、オリックス担当でイチロー氏の取材を続けていたとき「この男ならやれるかも」と期待を込めて書いたものです。

ハッキリ言って空想の世界ですが、それでも当時の仰木彬監督などは「佐藤義則が42歳でやるのにイチローが51でできんことはないやろ」と、当時のベテラン投手を引き合いに出して言い切っています。

日本球界の最年長出場は2015年(平27)10月7日の中日のレジェンド・山本昌投手で「50歳1カ月」。これを考えれば、イチロー氏の「51歳現役」も夢ではないような気もしましたが、そこはやはり先発投手と、常時出場する野手の違いもあるのでしょうか。

それでも当時22歳のイチロー氏が世間に与えていたインパクトはこの日、ワールドシリーズ出場を決めたドジャース大谷翔平に引けを取らないほど。さらに彼の野球に対するストイックな姿勢を目の当たりにしてだけに「あるかも。そんなことができるなら、やはりイチロー。あったら面白い」と、正月紙面で書いたのです。

あれから28年。残念ながらと言うべきか、やはりと言うべきか、イチロー氏はプロ野球選手としての生活を終えています。5年前の東京ドームでの引退会見では「これからどうする?」と聞いてしまいました。

それでも。先刻、承知でしょうが「プレーヤー」としてのトレーニングは続け、「会長付特別補佐兼インストラクター」を務めるマ軍では若手の練習で打撃投手を務め、オフには女子野球選手を相手にマウンドに立っています。さらに自身でプレーしながら高校生の指導も続けています。

これを「現役」と言えるかどうかは分からない、というか、従来の意味では違いますが、普通の51歳プロOBとは明らかに違う活動を続けているのは事実。

「高校生の体力にはついていけませんよ」。そんな話をイチロー氏から聞いたこともありますが、あの頃とまったく変わらない体形は、やはり超人。夢見た「51歳現役」を実現させているのかもしれません。【編集委員・高原寿夫】(ニッカンスポーツ・コム/野球コラム「高原のねごと」)