落語家三遊亭とむ(36)は、リモート落語会の開催や、15年前に出演した日本テレビ系連ドラマ「野ブタ。をプロデュース」の再放送など、コロナウイルス禍の自粛の中をしぶとく生き抜いてきた。今年8月に10年目に突入する落語家生活。「コロナのしのぎ方」を聞いてみた。
◇ ◇ ◇
2日にお江戸両国亭で2カ月ぶりに高座に上がりました。Zoom落語会はやってましたが、人前で話していないんで怖かったですね。新調した着物を着たんですが、着方もこれでいいんだっけと(笑い)。
コロナで40本くらい仕事が飛びました。大きなイベントは2月末に、りんごちゃんと一緒にやったディナーショーが最後でした。当日にキャンセルが100人くらい出て、イベンターの方は涙、涙でした。
そこから、どんどん仕事がキャンセルになって、4月の終わりくらいには、もう行きたくないなって。
でも、その時に1本だけ仕事が残っていました。群馬の「熟女パブのママ」のバースデーイベントかなんかだったんだけど、一向にキャンセルにならない。マジでやめてほしかったんだけど「何としてもやる!」と(笑い)。結果的には前日にキャンセルになって、ホッとしました。
ギャラは基本的には「もういいですよ」と言ってました。先方から頂けるようなお話をいただけたところからは、もらっていました。
先月30日に東京・月島教育会館で予定していた独演会がなくなったのも大きかった。ゴールデンウイーク開けまで待ったんですが、チケットの返金、それにチラシを刷ったり、招待状を出していましたから。
落語家になる前、タレント末高斗夢時代に出演していた、日本テレビの連ドラ「野ブタ。をプロデュース」が今、毎週土曜の午後10時から再放送されています。15年前の作品ですから奇跡ですよね。見た目も、人としても変わってないと。つまり成長してない、と言われます(笑い)。
でも、本当にありがたい。おかげで末高斗夢が落語家になったんだと、そして「まだ生きてる」と思ってくれる人がいる(笑い)。あの手この手で、続けるもんですね。
仕事がなくなるのは、これで3回目です。最初は「野ブタ-」に出たり調子に乗っていたら、気がついたらレギュラーが全部なくなっていた。完全な実力不足でした。
2回目は東日本大震災の時に、お笑い芸人の仕事が全部なくなった。今回は3度目だったので、気持ち的には強かったですね。
前回、前々回を踏まえて、止まっていたら駄目なんで、新しいことをいろいろやりました。
その1つがZoomを使ったリモート落語会。日本だけでなく、タイ、イギリス、ニュージーランド、アメリカといろいろな国の人が、わざわざ見てくれました。
新しい発見がありました。500円の料金で200世帯、500人くらいが見てくれました。僕の世代は子育て世代だから、寄席には絶対に来られないような人も見てくれました。Zoomなんて分からないはずのおじいさんが苦労してみてくれて、コメントをくれたのには感動しました。
リモート落語会で、初めて僕のことや、落語を見てくれた人も多かったと思います。チャット機能でコメントをもらえたのも面白かったです。これからは寄席に客を入れた高座の配信もあるかと思います。
ただ配信は生のお客さんの反応がないから大変。お客さんがいると、間違えたり、噛んだりしてもアドリブでごまかせたりするけど、配信だと実力がはっきりと出ます。怖いですね。頑張ります。
YouTubeも新しく作って、落語以外でも見られる機会を増やしていこうと思っています。
落語以外のことも、いろいろやってみました。自動販売機をリースして置いてみました。いろいろな飲み物を入れてるんですけど、冷やし甘酒がすごく売れたり、110円でお得な値段の高級茶より100円の普通茶の方が数倍売れたりと、新たな発見があります。
僕は「とむ茶」というお茶を作って売っているんですけど、これをペットボトル化して売っていこうかと。まぁ、いろいろな物を入れて“面白自動販売機”にして、YouTubeで配信するのもいいかなと。
将来的には、とむ茶を大きくして、番組スポンサーになれるくらいにして、伊藤園さんと競合できたらと思っています(笑い)。
◇ ◇ ◇
他業種から転じてきた仲間の三遊亭鳳月さん、笑福亭茶光さんと作っている「転身組落語会」のクラウドファンディングを始めようと思っています。
お金が集まったら軽自動車を買って、後部をステージに改造して全国を回ろうと思っています。密を避けて、田舎の農村でパイプ椅子を並べて、僕らの落語を聞いてもらおうと思っています。
この4月からMBSラジオ「ヤングタウン日曜日」の“月の最終週”のメインパーソナリティーになりました。
基本は笑福亭鶴瓶さんがメインで僕もレギュラーなんですけど、これが“A面”。最終週だけは僕とMBSの福島暢啓アナウンサーの2人でやります。これが“B面”です。だけどコロナの影響で、4月も5月もリモート出演ばっかり。早く大阪のスタジオに行きたいですね。
まぁ、大変なことばかりのコロナですけど、先月30日に持続化給付金100万円と、特別定額給付金10万円の家族3人分、計130万円が振り込まれました。ありがたいことです。マスクも届いています。
あと5代目円楽一門会の前座、二つ目にということで、6代目三遊亭円楽師匠から10万円をいただきました。師匠の(三遊亭)好楽には川柳大会優勝の1万円と優秀賞の5000円。合計141万5000円で、本当に助かりました。
今年8月からは、落語家になって10年目に入ります。入門させてくれた師匠好楽のためにも、応援してくれる人のためにも、そして家族のためにも、もっと頑張っていきたいと思っています。
◇ ◇ ◇
◆三遊亭(さんゆうてい)とむ 1983年(昭58)12月31日、東京都生まれ。99年2月に末高斗夢(すえたか・とむ)の芸名でデビュー。00年「ミスター・ヤングマガジン」グランプリ。11年8月に三遊亭好楽門下に入門、高座名は三遊亭こうもり。14年9月に二ツ目に昇進して、三遊亭とむに改名。家族は妻と1男。166センチ、血液型O。