反省しています。ちょっと侮っていました。東京・渋谷の東急シアターオーブで上演中の、WEST.の濱田崇裕と神山智洋がダブル主演するミュージカル「プロデューサーズ」に出演している王林(26)のことを。

青森県のご当地アイドルグループ出身で、津軽弁を話してバラエティー番組で人気のあるタレントという程度の認識しかありませんでした。「プロデューサーズ」でミュージカル初挑戦、しかも舞台出演も初めてという王林にそれほど期待せずに舞台を見に行きましたが、結果は、冒頭に書いたように予想を上回るものでした。

王林が演じたのは、スウェーデン出身の女優志望のウーラ。この作品の舞台は1959年のブロードウェーで、今でこそ、スウェーデンは先進的な福祉国家として知られていますが、当時はまだヨーロッパの北方にある小国というイメージしかなかったでしょう。ウーラも金髪にスタイルもいいけれど、ろくに英語も話せない、根は純朴な女の子という設定です。そんな役柄に王林がうまくはまっていました。初めて登場した時には華やかな輝きがある一方で、見た目の印象とは異なるウーラの賢明さ、品の良さもしっかりと表現していました。

さらに驚いたのは、歌もダンスも見事だったこと。ソロやデュエットで数曲歌いましたが、伸びやかな歌声で声量もあり、ショーの場面ではきれのいいダンスを見せました。過去の公演では、宝塚歌劇団出身の元トップスター彩輝なお、18歳の時にミュージカル「ロミオ&ジュリエット」のジュリエットに抜てき以来、ミュージカル女優の王道を行く木下晴香がウーラを演じていますが、今回の王林が一番役にあっていたように感じました。恐るべし、王林。今後もミュージカルで活躍する姿を見たいと、期待したくなりました。【林尚之】

ミュージカル「プロデューサーズ」で熱演する王林(撮影・中島郁夫)
ミュージカル「プロデューサーズ」で熱演する王林(撮影・中島郁夫)