監督賞、石原裕次郎賞のダブル受賞となった原田真人監督(66)は映画製作を恋愛に例え、「今、恋が成就し、華燭(かしょく)の典を挙げた思いです」と笑顔を見せた。裕次郎賞の表彰では裕次郎夫人の石原まき子さんから賞金300万円が贈られた。

 前年受賞者で、監督賞のプレゼンターとなった山崎貴監督は15歳下。年齢を意識したわけではないだろうが、原田監督は「60歳を超えた映画作りは恋愛ですよ。若い頃の恋愛みたいにときめくんですね」と目を輝かせた。

 演出だけでなく、常に脚本作りから始める監督は「脚本書いているときから、もう脳がときめいているんです。恋の成就が映画公開なら、今は華燭の典ですね」と受賞の喜びを表現した。対象となったのは時代劇の「駆込み女と駆出し男」と戦争映画「日本のいちばん長い日」。「子どもの頃に親しんだのが時代劇、戦争映画、そして西部劇でした。いつかジョン・フォードの心の地モニュメントバレーで西部劇も撮ってみたい」と青年のような夢も明かした。

 裕次郎賞表彰の舞台上では、夫人でジャーナリストの福田みずほさんから花束を贈られた。対象作の「日本の-」には、夫妻のなれ初めから縁がある。

 みずほさんは「原作者の半藤一利さんが週刊文春の編集長をなさっていたとき、私はそこで働いてまして、半藤編集長の指示で出張したロサンゼルスで主人と知り合ったんです」と秘話を明かした。

 結婚40年の夫妻の歩みが結実したように、作品は終戦の真実に肉薄する重厚な作品だった。12歳のときに疎開先で玉音放送を聞いたという石原まき子夫人は昭和天皇の「終戦の聖断」を真正面から取り上げた作品に感慨深げ。「心を打たれる思いでした。日本人として、こういう作品をずっと見たかったんです」。

 まき子夫人の言葉を受け、監督も「真珠湾攻撃のあったハワイで上映会をしました。現地の人たちにこの作品が理解と称賛を受けたことが、大きな宝になっています」と思いを新たにしていた。

 裕次郎賞は7年前の「クライマーズ・ハイ」に続いて2度目。三つ山に折った黄色いポケットチーフを指さして「黄色は幸せを呼び込む色です。ぜひとも3度目を狙いたいという、僕の正直な思いです」と新たな挑戦も誓った。【相原斎】