【琴櫻の言葉】勝った瞬間、感情を抑えた品格 気持ちの安定がもたらした初V

大相撲九州場所で初優勝した大関琴櫻(27=佐渡ケ嶽)が、千秋楽から一夜明けた11月25日、福岡市の部屋で会見しました。会見では大関豊昇龍との千秋楽相星決戦を振り返り、横綱昇進の懸かる来年1月の初場所に向けた意気込みを語りました。また、石破茂首相から祝福のメッセージが届いたことも判明。同席はしませんでしたが、父で師匠の佐渡ケ嶽親方(元関脇琴ノ若)が、横から見つめる中で行われた、一夜明け会見の一問一答をお届けします。

大相撲

一夜明け会見で初優勝を報じた本紙を手に笑顔を見せる琴櫻(撮影・小沢裕)

一夜明け会見で初優勝を報じた本紙を手に笑顔を見せる琴櫻(撮影・小沢裕)

「人前じゃなくても喜ぶことはできますから」

―一夜明けて優勝の実感は

琴櫻そうですね、まあ、あの…。正直、実感がそんなに、思っていたよりもなくてですね。あとは周りの皆さんから「おめでとう」と言われたりとか、そういうので少しずつ「本当に(優勝)したんだ」という感じが少しだけありますね。

―それでも「少し」だけ

琴櫻そう。なんていうんですかね。自分ではもっとあるかなと思っていたんで。余計にたぶん、あまり感じていないんだと思います。

琴櫻初優勝の一夜明け会見で先代琴櫻の写真パネルを背にカメラマンの要望に応えて「1」のバルーンを手に笑顔で記念撮影に臨む(撮影・小沢裕)

琴櫻初優勝の一夜明け会見で先代琴櫻の写真パネルを背にカメラマンの要望に応えて「1」のバルーンを手に笑顔で記念撮影に臨む(撮影・小沢裕)

―夢にまで見た優勝。こういう感じなんだな、というのが分かった

琴櫻はい、はい、そうです。

琴櫻(左)は幕内初優勝を飾り八角理事長から賜杯贈呈を受ける(撮影・小沢裕)

琴櫻(左)は幕内初優勝を飾り八角理事長から賜杯贈呈を受ける(撮影・小沢裕)

―優勝した気持ちが強く出てきたのはどの瞬間

琴櫻理事長から賜杯をいただいた時もそうなんですけど、あと自分の中で一番印象的だったのは、表彰が終わって、支度部屋に戻った時に、後援会の方々が万歳(写真撮影)で待っていて、拍手で迎えていただいた時に、少し、なんて言うんですかね。自分が入門した次の場所で奨菊関が優勝して、同じような雰囲気を見させていただいたので、自分が迎え入れてもらえる側になれたんだな、というのはありましたね。

初優勝を果たし、賜杯を手に後援者らと喜ぶ琴櫻(代表撮影)

初優勝を果たし、賜杯を手に後援者らと喜ぶ琴櫻(代表撮影)

―多くの方が喜んでいる姿を目にしたのは大きい

琴櫻そうですね。自分で賜杯をいただいた時もうれしかったですし、あの瞬間を何度も、小さいころから見てきて「こうなりたいな」と思ってやってきたので。そこも本当にうれしかったんですけど。本当に、支度部屋で、部屋の若い衆もそうですし、親方衆も、みんなが祝福してくださったので。よかったなと思える瞬間ではあったかなと思います。

少し緊張した面持ちで新弟子検査を受ける鎌谷(左、のちの琴櫻)。右は玉ノ井親方(2015年10月28日撮影)

少し緊張した面持ちで新弟子検査を受ける鎌谷(左、のちの琴櫻)。右は玉ノ井親方(2015年10月28日撮影)

―新弟子検査が九州場所。丸9年で大関昇進。道のりはどうだったか

琴櫻まあ、長かったような、早かったような。やはりこの、ここで入門して、稽古を積んできて。ここにも番付がいっぱいあるので、去年自分の地位がどこだったか分かりますし、上に上がって帰ってくることができたなと思いながら、やれる場所でもありましたし。あとは部屋の、当時現役だった勇輝関、恵光関と一緒に、同じ稽古場で引っ張っていただいて、また下から勝峰が追いかけるように上がってきて、負けたくない気持ちでやってきたのが、本当に、自分の身になったんだなと思いました。

―大関同士の千秋楽相星決戦を振り返って。また、なぜ勝てたのかを

琴櫻本当にこう、ガムシャラに取っていたので。あの短い時間で、これだけ動いていたんだ、と思いましたし。ただ、しっかりと、どんな場面でも落ち着いて、最後まで取り切れたというのが、体が反応してくれたところの1つかなと思います。

九州場所千秋楽 はたき込みで豊昇龍を下した琴櫻(右)(撮影・岩下翔太)

九州場所千秋楽 はたき込みで豊昇龍を下した琴櫻(右)(撮影・岩下翔太)

―場所前からやってきたものが出せたか

琴櫻もちろん部屋の稽古もそうですし、自分も師匠や親方衆に指導していただきながら、自分でも関取衆が若い衆を引っ張り上げるというのを大切にして、やっていかないといけないなと思って。自分にも言い聞かせながら、一緒に上がっていきたいなと思って、やってきていたので。またそれが、少しずつ身になってきたのかなというのもありますし。あとはこう、小さいころから相撲をやってきて、中学、高校で(埼玉)栄の山田先生のところでお世話になって、その経験も本当に、今、生きてきているなと思いますね。

初優勝を飾った琴櫻(左)は千秋楽パーティー会場で父である師匠の佐渡ケ嶽親方に水を付ける。右は母でおかみの真千子さん(撮影・小沢裕)

初優勝を飾った琴櫻(左)は千秋楽パーティー会場で父である師匠の佐渡ケ嶽親方に水を付ける。右は母でおかみの真千子さん(撮影・小沢裕)

―師匠にはどこで、どういう形で報告したのか

琴櫻千秋楽のパーティー会場で(鏡開きの)酒だるの前で、やっと会ったので、あんまり会話してなかったですね(笑い)。

―どういう報告を

琴櫻「おかげさまで優勝できました」と言って。写真撮影の時に、ほんの少しだけしゃべったぐらいです。

―師匠からはどんな言葉が返ってきた

琴櫻横で見てる(笑い)。まあ「おめでとう」と言ってくださって。

記念写真に納まる三賞受賞力士、左から技能賞の若隆景、敢闘賞の隆の勝、殊勲賞の阿炎、手前は優勝した琴櫻

記念写真に納まる三賞受賞力士、左から技能賞の若隆景、敢闘賞の隆の勝、殊勲賞の阿炎、手前は優勝した琴櫻

―千秋楽の相撲については

琴櫻よく体が動いたなと、はい。本当に、自分でも反応だなと。考えていなかったというか、本当に体が動いた、無意識な反応だったので。その時はまだ、ちゃんと(映像を)見返していなかったので、動いたんだなという感じでした。

―15日間全体を振り返って、優勝へのターニングポイントになったものは

琴櫻今場所ですか? 思ったよりもそれがなくて、逆に負けた日も、パッと切り替えて、ずっと同じメンタルというか。同じ感覚でずっと走り抜けられたのが一番よかったのかなと。あまり一喜一憂というか、気持ちの強弱も大きくなく、フラットにずっと同じようにいけたのがよかったのかと思います。

優勝力士インタビューを受ける琴櫻

優勝力士インタビューを受ける琴櫻

―これまでにはない感覚

琴櫻(千秋楽に)近づいていくにつれて、いつもより気合が入ったりとか、それが硬くなっていることにつながっているのかなと思ったんですけど、今場所は特に、もちろん気持ちも入っていたんですけど、それよりも終始、落ち着いて、毎日同じように稽古場で確認しながら、継続できたのが本当に大きかったのかなと思います。

―この1年という意味では単独の年間最多勝。それについては

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1999年入社。現在のスポーツ部ではサッカー(1)→バトル→五輪→相撲(1)→(5年半ほど他部署)→サッカー(2)→相撲(2)→ゴルフと担当。他に写真部、東北総局、広告事業部にも在籍。
よく担当や部署が替わるので、社内でも配った名刺の数はかなり多い部類。
数年前までは食べる量も社内でも上位で、わんこそばだと最高223杯。相撲担当になりたてのころ、厳しくも優しい境川親方(元小結両国)に「遠慮なく、ちゃんこ食っていけ」と言われ、本当に遠慮なく食べ続けていたら、散歩から戻った同親方に「いつまで食ってんだ、バカヤロー!」と怒られたのが懐かしいです。