はっきり言えば“戦犯級”とも言える低迷だった。今季の汚名返上へ、懸命にバットを振り込んでいた。オリックス頓宮裕真捕手(28)は先日まで行われた高知秋季キャンプに参加。若手主体のメンバーの中で、昨シーズンの首位打者が、まずテーマとして取り組んだのは意識改革だった。
「自分に甘えを出さず、歳も(若月)健矢さんがいますけど、他の野手では一番上なんで、しっかりグラウンドの中で、声とかプレーで引っ張っていきたい。この時期にそういうのはあまりないと思うので。しっかり違った姿勢で声とか出せば、それが自分にもプレッシャーになると思うので、自分に言い聞かせるように声を出していきたい」
真っすぐにそう語る表情やコメントの中身から、今年2月の宮崎春季キャンプ時との違いを感じた。
こんなことがあった。春季キャンプ中のある日、開幕戦で対戦するソフトバンクの小久保監督が開幕投手は有原と公表。対戦するオリックス担当記者としては野手の反応を取材したい。そこで昨季に首位打者を獲得した頓宮にコメントを求めた。対戦成績も良かった。だが、その第一声に、かなりがっかりした。
「有原さんですか? 自分は出られるか分からないので。何とも言えないです。はい」
本心なのか? 意外すぎる言葉に、次の質問が頭に浮かばなかった。確かに1シーズンの活躍で、レギュラーが確約されているわけではないだろう。特に中嶋監督は相性や条件など様々に考慮し、日替わりでオーダーを組む。だが、今年も打線の中心になるであろうタイトルホルダーから、そんな自覚が感じられなかったことが、とても残念だった。そして今季は打率1割9分7厘、7本塁打、30打点と大幅に数字を落とした。
そんな経緯があったので、先日高知で聞いた「引っ張っていきたい」という言葉がこれまた意外だった。そして来季は期待できるのではと感じたのだった。
そんなメンタル面だけでなく、技術的に打撃フォームの改造にも取り組んでいた。軸足となる右足にゴムバンドを巻いて、体が前に突っ込みすぎないような練習を繰り返していた。「粘れるような意識で。早いタイミングで(左の)足を上げたときに、着くまで長く待てるように。そこだけ意識してます」。バットを振る回数を増やすだけでなく、質も高めて秋季キャンプを過ごした。
「やっぱり結果が出ている時は、去年とか打てなくても何とかいけたところはあった。でも打てなくてチームも負けた時は、どうしても声も出なかったですし。キャンプは特にしんどいことをしますし、結果とかはないですけど、しんどい時にこそ先頭に立って引っ張って行けたら。そういう思いです」
あらためて責任感をにじませた背番号44。今季の大きな課題として残ったチームの得点力向上へ、打棒復活が鍵を握っている。【オリックス担当=大池和幸】