「奇跡の9連休」だったらしいが年末年始の休みが明け、世間の大方が始動した6日、阪神球団も年賀式を行った。ここで控えめながらも誇らしげな話をしていたのが2年目に入る球団社長・粟井一夫である。
大阪・堺市の出身。金沢大を出て、88年に阪神鉄道に入社。その後、社員を続けながら関学大の大学院を修了した。タイガース関係では、球場リニューアル担当課長、阪神甲子園球場長などを務めている。
昨年、還暦を迎えたがスリムな体形を保ち、12球団NO1の人気チーム・阪神の球団社長という難しく、かつ微妙な仕事を務めながら不機嫌な表情をしているのを見たことはない。そんな粟井が年初に喜んだのはおみくじだ。自宅近くの神社で大吉が出たという。
「2023年以来の大吉です。会社に入って三十数年たちますが、大吉は3回しか引いたことなくて1回目は忘れるぐらいで。2023年と2025年。神様からは(日本一)奪還のゴーサインが出ています」
1回目を忘れるあたり、都合がいい? おみくじ経験なのだが、とにかく38年ぶり2度目の日本一に輝いた23年が大吉。それに続く大吉だから縁起がいいというわけである。まずは、めでたい。ちなみに、おみくじで「凶」が出るとイヤがるのが普通だが、これは「今が底」というとらえ方をすればいいそうで、いずれにせよ、自分の気持ちの持ち方ということか。
そこで思うのは20年前だ。闘将・星野仙一で勝ったのは03年。それから1年空いて05年に岡田彰布で優勝している。「03→05」にならえば「23→25」は期待できるかもしれない。
適切な言い方かはわからないが今年は「周年イヤー」である。戦後80年。昭和換算なら「昭和100年」だ。関西の人なら忘れられない阪神・淡路大震災から30年でもある。そして阪神にとっては球団創設90周年の節目。「世代を超えて愛され続ける球団であり続ける。次の100周年に向けて、挑戦し続ける球団であり続ける」。粟井は力を込め、今後への抱負を語っていた。
若き新指揮官・藤川球児にいきなり「優勝」という責務を与えるのは厳しい気もする。それでも阪神が毎年、優勝争いに絡むようになったことは間違いない。「寝正月」だったという球児もすでに頭はフル回転しているはず。楽しみな25年のスタートだ。(敬称略)【高原寿夫】(ニッカンスポーツ・コム/野球コラム「虎だ虎だ虎になれ!」)