【織田信成の言葉】 「人間の限界を知りたかった」11年前と同じ4位に「信じられない」

11年ぶり出場の37歳、織田信成(37=大阪スケート倶楽部)が、合計234・68点で11年前と同じ4位入賞となりました。今季限りでの2度目の現役引退を表明しており、「死ぬ気で限界に挑戦した」という全日本選手権。家族とファンの支えもあり、充実の表情でやり遂げました。

フリー後には今後についての言及も。前日練習からSP、フリーを終えるまで、笑いあり涙ありの囲み取材の様子を「織田信成の言葉」としてお届けします。

フィギュア

<フィギュアスケート:全日本選手権>◇21日◇大阪・東和薬品RACTABドーム◇男子フリー

「11年前はもっとプレッシャーでがんじがらめになっていた」

19日の公式練習を終えて テレビへの取材対応

―練習お疲れ様でした

ありがとうございました。

公式練習に臨む織田(撮影・前田充)

公式練習に臨む織田(撮影・前田充)

―全日本選手権の公式練習に参加して、今はどのような思いですか

正直まだまだすごく不思議な感じで。11年ぶりっていうことなんですけど、 地元開催ということによって慣れ親しんだ場でもあるので、練習は思いのほか気持ちは落ち着いて練習できてたんじゃないかなと思います。

―この大会は最後となるのでしょうか

そうですね。全日本出るのはもう今回が最後というか、もうちょっと膝と腰がもうもたないので(笑い)。今年が最後にはなるんですけど、でも最後やからこそ、全身全霊で臨みたいと思います。

―半分くらいの年齢の選手と一緒です

それは、僕のこと年寄りやっていうふうに言ってるんですか(笑い)。

―すごいなと思います。改めて、若い選手に伝えたいメッセージはありますか

一番若い子は多分14歳とか15歳の子たちで、正直僕の息子とほぼ年齢一緒みたいな子と試合するのは、なんか申し訳ないなっていう気持ちもあるんですけど。やっぱり自分のやることは思いっきり、この会場で見てる方に喜んでもらうっていうことなんで。そういう全力でやってる姿っていうのを、会場の人もそうですし、一緒に試合してる子にも。37歳までこんな粘ってジャンプ跳んでる人おるんやなっていうふうに感じてもらえたらいいなと思います。

公式練習に臨む織田(撮影・前田充)

公式練習に臨む織田(撮影・前田充)

―前回出場した11年前とは、気持ちは違いますか

そうですね。やってることは一緒なんですけど、今の方がなんかやっぱすごく楽しいというか。正直11年前はもっとプレッシャーでがんじがらめになっていたと思うので、今の方がのびのび楽しくできているんじゃないかなと思います。でも、本当に毎日毎日「明日できなかったらどうしよう」みたいな感じで生きてるので。そうですね。やっぱり試合でやらないことには何にもならないので、試合でしっかり決めたいです。

11年前の全日本選手権男子SPで演技する織田(2013年12月21日撮影)

11年前の全日本選手権男子SPで演技する織田(2013年12月21日撮影)

―SPからかなり盛り上がりそうですね

そうですね。ショートやっぱり「マツケンサンバ」っていう曲を選んで、選んでからこの大阪っていう場所が全日本って決まったので、もうやっぱり気合いを入れて盛り上げないといけないなというふうに思いますし。ファンの方もなんか金の振るやつみたいなものを作って、すごく気合が入っているようなので、皆さんが拍手できるようなプログラムにしたいと思います。

―縁がある地での開催です。どのようにこの大会を終わりたいですか

僕も今大阪に住んでて、普段はほとんど試合もアイスショー見に来ない家族がみんな見に来てくれるので。多分日頃何してるかって全然知らないと思うので、こういうことをしてるんだよってしっかり僕の家族にも伝えたいです。

公式練習に臨む織田(撮影・前田充)

公式練習に臨む織田(撮影・前田充)

―演技が終わった瞬間にはどのような表情していたいですか

その質問をされるのも今日で1万回目なんですけど(笑い)。嘘です、嘘です(笑い)。でも、やっぱり笑顔で終わりたいっていうのはすごく気持ちであって、ジャンプが決まろうが決まらなかろうが、結果がどうであれ、やっぱり最高の笑顔で終われる大会にしたいなと思います。

―「マツケンサンバⅡ」を選んだ理由を教えてください

「マツケンサンバ」をずっと滑りたいなと思ってて。今年シーズンが始まる前に、自分が現役最後…、現役最後っていうか2回目の現役最後のタイミングで、やっぱりちょっとどうしても「マツケンサンバ」を滑りたいなっていう気持ちになって。で、やっぱりすごく盛り上がる曲ですし、国民的盛り上げソングだと思っているので。この曲の力にあやかって、パフォーマンスしたいなっていう思いで選びました。

―一番盛り上がる振り付けはどの部分ですか

ステップのところでちょっと腰を振るところがあるんですけど、そこはめっちゃもう表情もしっかり作って振り付けしてるので、そういうステップの途中の振り付けがポイントです。

―会場に来て、込み上げてくるものはありますか

込み上げてくるものを、今ちょっと抑えながら(笑い)。試合でしっかりやりたいなっていう気持ちが強くて。やっぱり終わった時にはもう多分何かがあふれ出るんじゃないかなと思うんですけど、でも今はちょっと抑えて、しっかり4回転を決めたいと思います

「試合始まる前に泣いちゃった」

ペン記者への取材対応

―今の心境はいかがですか

なんか、ネットでも誰が勝っても初優勝って、織田くんがおるからあんまりメディアも大きい声で言えてない。めっちゃおもろい、みたいな Xのポストを見て、なんかこれってちょっと迷惑かけてんのかな、みたいに思ったんですけど。僕もさすがにちょっとそんな表彰台上るとか、もうやってる構成も全然違うのでそんなおこがましいことは言えないですけど。でも、今日の練習とかで、今自分ができる100%をまず出すっていうのが自分の目標だと思ってるので、まずそれをしっかり、自分の仕事をきっちりやって会場を盛り上げたいと思います。

―練習でも4回転ジャンプが入っていました。調子はいかがですか

そうですね。うーん、4回転ちょっと、本当にもうギリギリで毎日生きてるので。

明日になったらまた跳べないとかっていうのが本当にざらにあるので、もう何て言ったらいいかわからないですけど。でも、調子が悪い時でも絶対に4回転、1日何回か絶対成功させるぞっていう気持ちで毎日練習してきたので、肉体的にはしっかり4回転を跳ぶ体はできてると思うので「神のみぞ知る」で本番は思い切って跳びたいなと思います。

公式練習に臨む織田(撮影・前田充)

公式練習に臨む織田(撮影・前田充)

―最終グループで滑りたいという思いはありますか

そうですね。まあ入りたいですけど、やっぱり正直もうショートから4回転跳ぶ選手すごく多くて、決まったとしても本当にどうなるかわからないですけど。ただ、でも、そんな弱気にならず、しっかり強気で思いっきり、いけいけどんどんで頑張りたいなと思います。これって意味あるのかな? これ入ってます?(マイクを叩いて)。全然なんか反響がないから聞こえてんのかなと思って、すいません、失礼しました。

―後輩にどのような背中を見せたいですか

そうですね。若い子に言いたいのは、37歳って思ったより体きついぞっていう(笑い)。皆さん多分知ってる方ばっかりだと思うんですけど、ここにいる方は(笑い)。皆さん37超の方ばっかりだと思うんですけど。思ったよりやっぱり若いときみたいに、なんか無茶が効いたりとか、そんな体では決してないんですけど、その中でもやっぱりできるんだぞっていうところは見せたいなと思ってます。

―心置きなく泣けますね

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スポーツ

勝部晃多Kota Katsube

Shimane

島根県松江市出身。小学生時代はレスリングで県大会連覇、ミニバスで全国大会出場も、中学以降は文化系のバンドマンに。
2021年入社。スポーツ部バトル担当で、新日本プロレスやRIZINなどを取材。
ツイッターは@kotakatsube。大好きな動物や温泉についても発信中。