「3人でいくよ」三宅咲綺に火を付けた中野園子の言葉、三原舞依が見た心の変化

フィギュアスケートの全日本選手権(12月20~23日、大阪・東和薬品RACTABドーム)女子で、4年連続6度目の出場となる三宅咲綺(22=岡山理大)が、総合9位となり、来季の強化選手復帰を確実にしました。ショートプログラム(SP)では会心のノーミス演技を披露。この1年の集大成の舞台で、合計得点とともに自己最高を更新しました。同門の三原舞依(25=シスメックス)の視点も交えながら、舞台裏の物語を「Ice Story(アイストーリー)」としてお届けします。(敬称略)

フィギュア

◆三宅咲綺(みやけ・さき)2002年(平14)11月23日、岡山県倉敷市生まれ。7歳の時に競技を開始。岡山理科大付属高2年時の19年全日本選手権で12位。岡山理科大に進学し、坂本花織の勧めで22年春に神戸クラブへ加入。移籍1年目の同年の全日本選手権ではSP5位発進。24年10月の中四国九州選手権で4連覇を達成。同11月の西日本選手権で初優勝し、4年連続で全日本選手権に出場。155センチ。船舶免許を持ち、趣味は船釣り。足を運んだ水族館は15館以上。

三原舞依が認めた三宅の努力

「咲綺ちゃんは、やっぱり大丈夫だと思ってた」

2024年12月20日。東和薬品RACTABドームで行われた全日本選手権女子ショートプログラム(SP)の最終グループ。

最後から3人目となる27番滑走の三原舞依は、6分間練習を終えた控室で、会場から漏れ出す音に静かに耳を傾けていた。ミュージカル女優の高くしなやかに伸びる発声を最後に、曲が鳴りやむ。一呼吸置いて、鼓膜を揺らす音は、拍手と大歓声に変わっていた。

女子SPで演技する三宅(撮影・前田充)

女子SPで演技する三宅(撮影・前田充)

三原はその一瞬、自身の出番が次であることも忘れそうになった。

「やっぱり、大丈夫だったんだ」

ミュージカル「オペラ座の怪人」から不朽の名曲「Think Of Me」。演じたのは、神戸クラブの同門、三宅咲綺だった。直接演技そのものを目にすることはできなかったが、3歳年下の仲間の、弾けるような笑みは容易に想像がついた。

「ここまで、全日本までの練習期間、ホントに咲綺ちゃんは頑張っていました。朝練、夕練、間近でその姿を見てきたので、私自身がすごく咲綺ちゃんに自信を持っていました」

滑走屋での気づき

三原が思い描いた通りだった。

リンクの中央に立つ三宅は、スタンドへ満面の笑みを振りまきながら、声援1つ1つに頭を下げていた。時に、両手を胸の前で組み、感無量の面持ちを見せながら。

「6分間練習であまりうまく調整できていなかったので、その中できっちり決められたことはすごく大きかったです」

繊細かつ全身を大きく使ったダイナミックな滑りで、離れ離れになった恋人を想うヒロインの、力強い意志を銀盤に投影した。

女子SPで演技する三宅(撮影・前田充)

女子SPで演技する三宅(撮影・前田充)

冒頭の連続3回転トーループで高い加点を引き出すと、その後も幅のあるダブルアクセル(2回転半)、3回転ループと3本のジャンプを難なく成功。レイバックスピンや足換えコンビネーションスピンなどでも最高のレベル4を獲得した。

「これまですごく悔しい思いをしてきたので、『絶対ここに帰ってくるぞ』って思っていました」

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スポーツ

勝部晃多Kota Katsube

Shimane

島根県松江市出身。小学生時代はレスリングで県大会連覇、ミニバスで全国大会出場も、中学以降は文化系のバンドマンに。
2021年入社。スポーツ部バトル担当で、新日本プロレスやRIZINなどを取材。
ツイッターは@kotakatsube。大好きな動物や温泉についても発信中。