24年シーズンは、セ・リーグ3位のDeNAの下克上日本一で幕を閉じた。12球団それぞれに、今季の成績を左右した「瞬間」がある。「12球団担当記者が見た 今季のターニングポイント」と題し、密着取材を続けてきたからこそ知る分岐点を記す。第4回は、両リーグ3位のDeNAとロッテ。
ベテラン組の熱い言葉がナインの心を動かした。リーグ戦を3位で終え、CSで破竹の勢いで勝ち上がった7年ぶりの日本シリーズ。ソフトバンクにあっさり2連敗を喫した10月27日の試合後だった。キャプテンの牧が選手全員に集合をかけた。17年の日本シリーズを知る面々に呼びかけた。
チーム随一の熱い魂を持つ桑原は、目を血走らせながら言った。「はっきり言って今のソフトバンクに勝てる雰囲気がしない」。語気は強まり、心の中にはいら立ちも募った。「やっていて腹立たしいというか、負けて悔しくないんかと思った。どこかで日本シリーズに行って満足してるんじゃないかと感じた」。
同じく17年を経験した柴田もナインの前に立った。「もっとチャレンジしていこう。こっちは3位から。失うものなんてない」。7年前、王者ソフトバンクをリスペクトしすぎて敗れた記憶があった。山崎も「もっと投手も加わって1つになって戦おう」と呼応した。
全員が同じ方向を向いたDeNAは、果てしなく強かった。
リーグ戦で貯金42のパ王者を圧倒し、4連勝で日本一を決めた。リーグ戦はチーム防御率が5位で12球団最多の96失策とディフェンス面での課題が露呈したが、短期決戦ではデータを生かした継投策とチーム一丸で締まった戦いぶりを披露。CSファイナルは6試合で9失点、日本シリーズでも29イニング連続無失点に封じた。勝ち方を知ったナインが、来季こそ27年ぶりのリーグ優勝という“忘れ物”をとりにいく。【DeNA担当=小早川宗一郎】
ベテラン右腕の熱投が、ロッテのCS進出を決定づけた。9月28日の西武戦(ベルーナドーム)。先発マウンドに上がったのは、プロ16年目の西野だった。前の試合までチームは2連敗。4位楽天とのゲーム差は1まで迫られていた。
そんな中で迎えた敵地での4連戦初戦。西武2連戦後には楽天との直接対決2連戦が控えていた。この一戦の結果が、ロッテの命運を握っているといえた。経験豊富な西野も「チームの状況的にも負けられないところだったんで、前々日ぐらいから緊張して」と、重要度は肌で感じていた。
それでも、さすがベテランだった。プレッシャーをはねのけ、7回0/3を1失点。西野にとって2カ月ぶりの勝利が負の連鎖を止め、確実にチームを勢いづける1勝となった。翌29日からはバトンを受け取った小島、種市、佐々木が先発。勢いそのまま4連勝し、2年連続のCS進出を決めた。
昨季はCSでブルペンデーの試合をつくったほど、終盤にかけて先発投手が足りなくなった。だが、今季は違った。「先発も昨年よりもレベルアップしてほしかったんで、前半少し球数を増やしたりイニングを伸ばしたり、というふうにやってもらった。それでもしっかりシーズン投げられたのでそこはよかった」と、2年目の吉井采配が功を奏した。
今オフ、佐々木のメジャー挑戦が容認された。大きな穴となるのは確かだが、これは新たな先発投手誕生のチャンスでもある。「常勝軍団」になるには、若手投手の台頭を期待したい。【ロッテ担当=星夏穂】