アカデミー賞のノミネーションが、ロサンゼルスを襲った山火事の影響による2度の延期を経て23日に発表されました。本命不在と言われる今年のアカデミー賞は大混戦となっていますが、メキシコを舞台に麻薬王が女性に性転換して新たな人生をスタートさせる異色のミュージカルスリラー「エミリア・ペレス」が、作品賞や監督賞など主要部門を含む最多13部門で候補入り。スペイン語の本作は、非英語作品としても史上最多のノミネート数を獲得する快挙となりました。
一方で、俳優ダニエル・クレイグがスペインの巨匠ペドロ・アルモドバル監督とタッグを組んだ「クィア」や女優ゼンデイヤ主演の「チャレンジャーズ」がノミネートゼロだったことに驚きの声も上がるなど、今年も多くのサプライズノミネートと落選がありました。
最も話題になっているのが、主演女優賞部門。賞レース前半ではフロントランナーの一人と言われた「ベイビーガール」で年下インターンとの危険な誘惑ゲームに引き込まれる企業のCEOを演じたニコール・キッドマンと「マリア」でオペラ歌手マリア・カラスを熱演したアンジェリーナ・ジョリーが揃ってノミネートを逃しました。2人は先日発表された全米映画俳優組合(SAG)賞のノミネーションでも落選しており、続くオスカーからも除外されたことは衝撃を持って伝えられています。また、「Hard Truths」でロサンゼルス、ニューヨーク、そして全米批評家協会賞の3大映画批評家協会賞で主演女優賞を獲得したマリアンヌ・ジャン=バプティストも候補入りを逃し、冷遇との声が上がっています。代わりにサプライズでノミネートされたのは、「I’m Still Here」のフェルナンダ・トーレスでした。
助演女優賞部門では、最多ノミネートを果たした「エミリア・ぺレス」からセレーナ・ゴメスが候補入りを果たすことができませんでした。また、デミ・ムーアが主演女優賞にノミネートされた「サブスタンス」からもムーア演じる主人公の若いバージョンを演じたマーガレット・クアリーが落選し、サプライズと受け止められています。
主演男優賞部門では、昨年のベネチア国際映画祭でお披露目されて高い評価を得た「クィア」でハンサムな青年に恋をする薬物中毒のゲイの中年男性を演じたクレイグが候補から漏れたことに落胆の声が上がっています。この部門には、ドナルド・トランプ米大統領の若かりし日を描いた「アプレンティス:ドナルド・トランプの創り方」でトランプ氏を演じたセバスチャン・スタンがサプライズで候補入りを果たしています。
また、助演男優賞部門では、2001年に作品賞に輝いたリドリー・スコット監督による「グラディエーター」の24年ぶりの続編となった「グラディエーターII英雄を呼ぶ声」で際立った演技を見せたデンゼル・ワシントンがノミネートを逃したことも大きな驚きでした。
監督賞では、5番目の枠を争っていた前作に続いて「デューン 砂の惑星PART2」でメガホンを取ったドゥニ・ヴィルヌーブ監督と作品賞を含む8部門にノミネートされた「教皇選挙」のエドワード・ベルガー監督が揃って落選。代わりに、「サブスタンス」のコラリー・ファルジャ監督がサプライズノミネートを果たしています。
【千歳香奈子】(ニッカンスポーツ・コム/芸能コラム「ハリウッド直送便」)