「パペポTV」が好きだった。若い読者にはピンと来ないかもしれないが、1998年まで11年間にわたって放送された読売テレビ(大阪市)の人気番組。上岡龍太郎と笑福亭鶴瓶というトークの達人が、打ち合わせゼロのぶっつけ本番で語り合う1時間。硬軟どんな話題でも2人が自由に取り上げ、鮮やかに料理してみせた。今でも懐かしく思い出すファンは多い。

「パペポTV」を録画したVHS(!)のテープは、何度も何度も繰り返して見た。正直、今放送されているテレビのどれよりもワクワクさせてくれる番組だった。

こんな面白いテレビはもう出てこないだろう、と思っていた。が、意外なところで「あ! これパペポと同じやん」と気づいてしまった。

それはMBSラジオ「ありがとう浜村淳です」(土曜午前8時)での、数分間だった。パーソナリティー浜村淳と、朝10時過ぎに毎週やってくる西川きよしのトークコーナー。これが秀逸なのだ。90歳と78歳。「超」のつくベテラン2人が自由に交わすトークがなんとも味わい深い。

かつてのハリウッドスターにして伝説のコメディアン、ダニー・ケイの話題をしていたかと思えば、次の瞬間には間寛平が吉本に入って花紀京の付き人をしていた時代の失敗談に移っている。さらには若き日のジミー大西の笑えるエピソードへと、流れるような会話が続く。

子どもの頃から映画や音楽に親しみ、芸能界で長く生きてきた浜村と西川だけに、大昔の話題であっても「まるで昨日見てきたような」リアルさでリスナーに届けてくれる。上岡、鶴瓶が時に皮肉や毒を交えていたのに対し、浜村、西川はあくまでも「懐かしくて、ほのぼのする」トーク。ラジオを聞くシニア世代も「あ~、そんなことあったなあ」と相づちを打ちつつ耳を傾けているはずだ。

かつて西川が参院議員だった頃、選挙期間中は浜村が代打で「素人名人会」の司会を務めたり、浜村が体調を崩した際、西川が病院を紹介するなど、2人の関係は単なる共演者以上に絆が強い。そうした関係性も会話からうかがえる。

西川が「ちょっと浜村さん、聞いてえや」といった感じで、近所に住んでいるおじさん同士の会話のようなのがいい。

「ありがとう浜村淳です」は昨年春、番組開始から50年の節目で月~金曜は放送終了。いまは土曜朝のみの放送となっている(別に「浜村淳の歌の宝石箱」がMBSラジオで放送中)。

ラジオ界の伝説でもある90歳と、お笑い界の大看板でもある78歳。いつまでも聞いていたいものだ。【三宅敏】(ニッカンスポーツ・コム/コラム「ナニワのベテラン走る~ミナミヘキタヘ」)