日曜の夜。サザエさん症候群なる言葉があるように憂鬱(ゆううつ)な気分になる方も多いはず。自身も20数年前にブラック企業的な会社に勤めていたことがあり、日曜の草サッカーが終わった後の時間が本当に憂うつであった。楽しい時間が終わり、月曜からはじまる地獄のような日々におびえながら、ゆっくりとグラウンド整備をしていた記憶がある。

そんな日曜夜に放送されているドラマ「ホットスポット」。バカリズムが脚本を務め、公式サイトをみると「地元系エイリアン・ヒューマン・コメディ」と聞いたことのない字面が並ぶ。さらには「不思議な出来事が起こったり起こらなかったりする」と相当ゆるい展開が予想される。

バカリズムといえば、ドラマ「ブラッシュアップライフ」が記憶に新しい。タイムループものらしく物語の緻密な設計とバカリズムらしい会話劇が加わり、安藤サクラはじめ実力派俳優が出演していたこともあり話題になった。それまでも脚本を手がけていたが、この作品で一気に人気脚本家としての地位を確保したのではないだろうか。

そこで今回紹介したいのは「ホットスポット」に宇宙人役で出演している角田晃広。主人公・遠藤(市川実日子)が務めるホテルの同僚であり、ひょんなことから宇宙人であることを告白する。角田といえばお笑いトリオ、東京03でボケを担当している。東京03といえば、上質なコントが持ち味で、チケットが取れないことでも有名である。

角田自身、2011年ごろからコンスタントにドラマや映画に出演しているが、2021年のドラマ「大豆田とわ子と三人の元夫」での印象が強い。芸人さんが俳優をやっている感は全くなく、普通に俳優として物語の中に溶け込んでいた。あと、今回もだが間の取り方がとにかくうまい。コントのクオリティーをみるかぎり驚くことではないが、俳優を本業としている人が見ると、芸人さんにあの芝居をされるとお手上げではないだろうか。

物語はまだ序盤だが、学校の体育館の天井に挟まったバレーボールを取るなど、宇宙人の能力を無駄遣いしているとしか思えない展開が続く。バカリズム脚本に角田晃広、数年前ならドラマとして考えられない組み合わせだが、業界に旋風を巻き起こすのではないかと思う。そして、憂うつな日曜夜にホッとでき、明日からゆるーく頑張ろうと思わせる希少なドラマになりそう。今後の展開に期待です。(ニッカンスポーツ・コム/芸能コラム「映画監督・谷健二の俳優研究所」)

◆谷健二(たに・けんじ)1976年(昭51)、京都府出身。大学でデザインを専攻後、映画の世界を夢見て上京。多数の自主映画に携わる。その後、広告代理店に勤め、約9年間自動車会社のウェブマーケティングを担当。14年に映画「リュウセイ」の監督を機にフリーとなる。映画以外にもCMやドラマ、舞台演出に映画本の出版など多岐にわたって活動中。また、カレー好きが高じて南青山でカレー&バーも経営している。最近では映画「その恋、自販機で買えますか?」「映画 政見放送」、10月18日には映画「追想ジャーニー リエナクト」が公開。