「ケイバラプソディー ~楽しい競馬~」は、大阪・岡本光男記者がエリザベス女王杯にコスタボニータ(牝5)で参戦する杉山佳明調教師(40)に迫った。開業4年目で、競馬通の間で「穴厩舎」として知られる。コスタボニータは4月福島牝馬Sで重賞初制覇。前走の府中牝馬Sは11着に敗れたが、杉山佳厩舎はこんな時こそ怖い!?
2年前のNHKマイルC前、G1に初挑戦する杉山佳師を取材した。送り出すカワキタレブリーは前走のアーリントンCで11着に敗れていた。「うちの馬は、最低人気で3着ですかね」。ジョークとも本気ともつかない表情で話してくれたが、結果はズバリ最低の18番人気で3着。勝ったダノンスコーピオンから首+首差という激走だった。
それから杉山佳厩舎に注目し、よく馬券を買ってきた。ありがたいことに上位人気ではなくても、よく好走する。今年のフェアリーSでは、5番人気のイフェイオンが重賞初制覇。同厩舎にとっても、うれしい重賞初Vで、記者も単勝1260円の馬券をいただいた。最近では2歳牝馬トゥインクルアップで単勝2050円(10月12日京都1R)を射止めた。
「トゥインクルアップはずいぶん馬が良くなっていたし、もともと期待している馬。レース前からそう話していたけど、あまり人気がなかったですね」
なぜ、そのジャッジは的確でよく当たるのか。ヒントがある。
「僕はもともと競馬ファンで今でも好きなので、自分の馬が出走していないレースも見ます。だから、管理馬を出走させる時はだいたい(他馬との)力関係が分かるし、なるべく相手が弱いレースを選びます」
もともと「目のつけどころを大事にしている」という師。その成果でオープン馬の数は順調に増え、今年重賞2勝と着実に実績を重ねている。
「杉山厩舎」と言えば、昨年の全国リーディングでG1・6勝を誇る杉山晴紀厩舎が既に一流としての地位を確立している。杉山佳師は「走らない方の“杉山”と言われないよう頑張らないと」と笑うが、いつか「ダブル杉山」と評される日がくるかもしれない。
エリザベス女王杯出走のコスタボニータは前走の府中牝馬Sで11着に敗れた。師は「距離延長はいいしコーナーは4つなので、うまくためが利くのでは…」とジャッジする。小倉記念では牡馬にまじって2着に好走しているように、一発の可能性は十分。波乱の主役はこの馬か。
◆杉山佳明(すぎやま・よしあき)1983年(昭58)12月17日、兵庫県生まれ。8度目受験の19年に調教師試験合格、21年開業。先週終了時点でJRA通算70勝(うち重賞2勝)。
(ニッカンスポーツ・コム/競馬コラム「ケイバ・ラプソディー~楽しい競馬~」)