G1が続き、競馬ファンの盛り上がりは年末まで終わらない。手拍子が鳴るファンファーレ、運命のゲートイン。その全ての合図になるのが発走委員による赤い旗だ。今回の「ケイバラプソディー ~楽しい競馬~」では舟元祐二記者がスターターの景色に注目し、JRAの発走委員をしている月原隆司技術参事役(57)に話を聞いた。
赤い旗が振られ、ファンファーレが鳴り、いよいよレースが始まる。この瞬間がたまらなく好き。G1にもなると手拍子も起こります。全ての始まりは発走委員(スターター)に委ねられ、競馬ゲームでもG1に馬を出走させるとスターターのカットインが入ります。もちろんファンだけではなく、競馬関係者も今か今かと楽しみにしているレースの開始。時には何万人もの観客を前に、赤い旗を掲げることになります。スターターにしか見えない景色。それを知りたくて仕方ない。そんな願いに快く答えてくれたのがJRAの月原隆司技術参事役でした。
「実は細かく言うと、あの赤い旗は皆さんに対しての合図ではないんです」。えっ。我々のためにではない。「ゲートから馬場の前方200メートルほどにいる白旗係に『今からレースが始まりますので準備はいいですか』という合図なんです」。そうですよね。よく考えれば業務ですもんね。そして、その後に発走再行(カンパイ)があった場合に白旗係が旗を振って、大きい声で「カンパイ、カンパイ」と言って騎手に伝えるという手順になっているらしいです。発走委員は原則、競馬場に3人。1日の計12レースを3人で割り、1人4レースを受け持ちます。「何もなく、無事に発走したときが一番ほっとします。できて当たり前。何かあれば即時対応というのが求められておりますので」。つつがない進行には、競馬ファンとして感謝しかありません。
発走地点で好きな場所を聞いてみました。やはり、スタンド前発走となる東京の芝2400メートルとかなのかとずっと聞きたかった。「確かにスタンド前は人がすごいですよね。歓声が大きいときはファンファーレが聞こえない時がありますよ(笑い)」。続けて「かなり人によって異なると思いますが、私の場合はゲートに集中できるように、静かな地点がいいですね。静かであれば、馬に起こった小さな音で気づけるかもしれないので」。向正面などですね。仕事人にG1も平場もないってことですね。頭が下がります。これからも、競馬が始まる合図および業務進行を楽しみに見ています。
(ニッカンスポーツ・コム/競馬コラム「ケイバ・ラプソディー~楽しい競馬~」)