あのとき行っといてよかった-。迷わず行けよ、行けば分かるさ。今週の「ケイバラプソディー ~楽しい競馬~」は、そんな競馬の魅力を伝えます。

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「行った方がいいよ」。6年前の春、栗東トレセンの騎手控室で武豊騎手にそう言われた。無敗のディープインパクト産駒サクソンウォリアーが挑む英ダービー取材のスケジュールの相談だ。

武豊騎手(2024年撮影)
武豊騎手(2024年撮影)

英ダービーの翌日にフランスで仏ダービーがある。そっちにもディープインパクト産駒が出走予定だった。せっかくなら仏ダービーも見たい。「行けるなら絶対に行った方がいいよ。フランスダービーも見た方がいい」。レジェンドの言葉に背中を押され、英ダービー取材を“英仏ダービー取材”に変更した。結果は大正解。歴史的な勝利を期待した英ダービーは単勝1倍台のサクソンウォリアーがまさかの4着に敗れたけど、翌日、ユーロスターで向かったフランス、シャンティイの仏ダービー、期待薄だった方のディープインパクト産駒スタディオブマンが勝った。最後の直線で馬群の真ん中から紺色の勝負服がジワジワ伸びてきた瞬間、「マジかよッ」。コース脇でカメラを構えながら何度も叫んだ。

ディープインパクト産駒スタディオブマン(2018年撮影)
ディープインパクト産駒スタディオブマン(2018年撮影)

スタディオブマンはその仏ダービーが最後の勝利になった。当時の相手関係もイマイチだし、パッとしない戦績で、同世代のサクソンウォリアーより1年遅れて種牡馬入りだった。「血統(祖母が名牝ミエスク)は抜群だけど、どうなのかな」。そう思っていたのだけど…。いい意味で裏切られた。現3歳の初年度産駒が絶好調。先月の英チャンピオンズデーでは、カルパナがG1英チャンピオンズフィリーズ&メアズSを制し、来年の凱旋門賞の有力候補になった(オーナーは今年の凱旋門賞馬ブルーストッキングと同じジャドモントファーム)。今年は22年の凱旋門賞馬アルピニスタと交配したことも伝えられ、来年は種付け料が2万5000ポンド(約510万円。今年から倍増)にアップする。欧州で、今をときめくディープインパクトの後継種牡馬になりつつある。

オーギュストロダン(2023年2月23日撮影)
オーギュストロダン(2023年2月23日撮影)

競馬は何が起きるかわからない。数年後、数十年後、どんな物語につながっているか、誰にもわからない。「行けるなら絶対に行った方がいいよ」。海外からキングジョージ6世&クイーンエリザベスS覇者のゴリアット、ディープインパクト産駒最終世代のオーギュストロダンがやってくる。武豊騎手ドウデュースを筆頭に日本馬が迎え撃つ。来週日曜(24日)のジャパンC(東京)。イクイノックスが勝った昨年も素晴らしかったけど、今年も後世まで語り継がれるレースになるかもしれない。入場人員は制限されるけど、ぜひ、競馬場へ行きましょう。【木南友輔】(ニッカンスポーツ・コム/競馬コラム「ケイバ・ラプソディー~楽しい競馬~」)

ドウデュースと武豊騎手(2024年撮影)
ドウデュースと武豊騎手(2024年撮影)