<菊花賞>◇20日=京都◇G1◇芝3000メートル◇3歳牡牝◇出走18頭
2周目の向正面、それまで後方にいたアーバンシックがもう好位の直後にいました。ゲートが速くないこともあって、鞍上のルメール騎手は序盤をゆったり導き、1周目の1~2コーナーで少し上昇。この位置までくれば、持っている脚からして大丈夫、というポジションを取ったのが2周目の坂の上り始めでした。
そこで、武豊騎手のアドマイヤテラが外から一気に上昇します。「淀の坂はゆっくり上って、ゆっくり下る」。名手があえて京都芝外回りのセオリーを破ったのは、切れないもののスタミナは豊富なアドマイヤテラの特長を生かす戦略だったのでしょう。しかし、ルメール騎手はつられません。動いた武豊、動かないルメール、2人の駆け引きがクライマックスでした。
結果的に、アドマイヤテラは押し切ったかというシーンを作って3着。アーバンシックは差し切って最後の1冠を射止めました。
2着ヘデントールは後方からアーバンシックをマークするような形で上昇し、最後の1完歩で2着に上がりました。父ルーラーシップ、母の父ステイゴールドという血統通りの長距離適性を示しました。
一方で、ダービー馬ダノンデサイルは6着に終わりました。内々で包まれた面はありましたが、ダービーも内を上手に立ち回っていましたので、直接の敗因ではないでしょう。外に出した直線はしっかり脚も使いました。
ダービーからの直行で馬体重は18キロ増。装鞍所の姿も見ましたが、まったく太くは見えませんでしたし、ほぼ成長分でしょう。とはいえ「10回の調教より1回の競馬」というのが昔からの格言です。京都芝内回り2000メートルの秋華賞では今やオークスからの直行がトレンドですが、外回り3000メートルの菊花賞はやはり別次元の競馬。2400メートル、2600メートルを超えてからのあと200メートル、400メートルが苦しいのです。確かに、ステップを使うには8月から動く必要があり、この猛暑の時代、リスクもあります。来年以降も菊花賞への臨戦過程には各陣営とも頭を悩ませるでしょう。 (JRA元調教師)