どん底の春→夏は「言わんから」日本一の京都国際、夏の大会で指揮官が信じたナインの姿
今年、高校野球で一番取材したチームはどこか…。今夏の甲子園で優勝を飾った京都国際だ。特に、今夏の甲子園優勝監督の小牧憲継監督(41)と優勝投手である中崎琉生(るい)投手(3年)には年始の練習公開から、この冬まで至るところで話を聞かせてもらった。
春にどん底を味わった甲子園を日本一の舞台に変えた間、チームの絆は深まっていた。
同校は22年も出場を決めていたが、部員の新型コロナの集団感染で開幕前日に出場辞退。その気合を胸に秘めて臨んだ24年センバツだったが、青森山田との1回戦でサヨナラ負けした。ぼうぜんとした表情でうつむきながら取材に応じていた当時の主将だった中崎は「周りを見るのはしんどい」とガックリ。小牧憲継監督(41)も精神的な負担を考慮し、主将を藤本陽毅(はるき)内野手(3年)に交代させたほどだ。
「夏入ってからは、言わんから」。中崎によれば、夏の京都大会前は監督から、「言わんから」と細かい指示は送らないことを伝えられていた。初戦を終えた指揮官は、甲子園に行けるチームであることを示唆した。「今年は、やることが分かっている子たちなので。甲子園でやり返したかったら、まず甲子園に行けと。それに向かって準備しなさい」。選手の自覚を促した。
夏の京都大会前、選手たちは自ら午前4時台に起床してチーム全体で予定にはなかった朝練を継続。夜になれば部員は、寮の消灯時間を逆算した短時間の夜の練習も行うなどして、全体を通して一体感を増していった。
今夏の初戦後、小牧監督はこう語った。「いまひとつ足りなかったのは、チーム力。最後の夏にようやくチームが1つになってきた」。
今年の京都国際は、春の京都大会から、秋の府大会3回戦まで21連勝を記録した。指揮官の信念がナインに伝われば、これほどの化学反応が起こる。春の悔しさを糧に一致団結したナイン。卒業後、次の舞台でも成長し、再び大舞台で活躍する姿を目にしたい。【アマチュア野球担当 中島麗】(ニッカンスポーツ・コム/野球コラム「野球手帳」)
神港学園・北原光広前監督「熱い気持ちが今なお」阪神淡路大震災きっかけ…退任後もボランティア
高校スポーツの主な球技の全国大会は複数会場で実施が通例 高校野球もいずれは…
野球人の憧れ甲子園、石川県の草野球チームの連盟が聖地に立つ 1月1日で能登半島地震から1年
どん底の春→夏は「言わんから」日本一の京都国際、夏の大会で指揮官が信じたナインの姿
元オリックス宮崎祐樹さん「野球を通じて夢を見てもらえる」亜大野球部OBが少年野球教室開催
野球をこよなく愛する日刊スポーツの記者が、その醍醐味、勝負の厳しさ、時には心が和むようなエピソードなど、さまざまな話題を届けます。