【獅子に二言なし】GMの肩書も外す…渡辺久信の信条に触れ、とっさに口を突いた言葉

埼玉西武ライオンズと、そのファンにとって悪夢のような24年シーズンが終わりました。40超の借金。渡辺久信GM(59)はシーズン途中から監督代行も兼任し、最後は引責で球団を離れる決意をしました。本当に辞めるのだろうか―。記者としてもなかなか答えが出なかった舞台裏をつづります。

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■だからこの日も、カメラマン席の前で1人でぼーっと立っていた。深い意味はない。

10月2日、本拠地最終戦から一夜明けたベルーナドーム。4日に行われる予定のビジター最終戦に向け、全体練習が行われた。

前夜の数十人の報道陣とはうって変わって、練習初めからグラウンドにいる記者はほんの4、5人。それでも特にこういう時期だから、群れたくはない。

CS進出がなくなった段階で渡辺久信GM兼監督代行(以後は「GM」と表記)の退任が報じられ、その後、西口文也ファーム監督(52)が来季の1軍監督に就任する方向性が報じられた。日刊スポーツも報じた。それでもまだ試合は残っている。ピリピリした独特な空気感。

そもそも練習中に記者が固まって何かを話していたら、選手も首脳陣も決していい気はしないだろう。1人でいる時間が長すぎるからか、選手から「金子さん、友達いないんですか?(笑い)」とイジられたこともあるけれど、見え方はそれくらいでちょうどいいと(私は)思う。記者全員が孤独に立っていたら、それはそれで怖いけれど…。

だからこの日も、カメラマン席の前で1人でぼーっと立っていた。深い意味はない。今年の私の本業はアマチュア野球担当だ。この日もどちらかというと「西武はドラフト1位、誰にするんだろう」という思考が頭を巡っていた。

人の声がする。ウオーミングアップの輪がほどけていた。ふとこちらに向かってくる人影に気がついた。目が合う。びっくり。

「おう! 何しに来た!?」

おはようございます。GMが歩いてきた。どうやらロックオンされて…いや、していただいている。

GMが近づいてきても、私の背後から「おはようございます」と聞こえない。つまり、他社の記者はこっちに近寄ってこない。背中からの視線をめちゃくちゃ感じつつも、あれ、これ、1対1で話すチャンスなのかな…。

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1980年11月、神奈川県座間市出身。法大卒、2003年入社。
震災後の2012年に「自転車日本一周」企画に挑戦し、結局は東日本一周でゴール。ごく局地的ながら経済効果をもたらした。
2019年にアマ野球担当記者として大船渡・佐々木朗希投手を総移動距離2.5万キロにわたり密着。ご縁あってか2020年から千葉ロッテ担当に。2023年から埼玉西武担当。
日本の全ての景色を目にするのが夢。22年9月時点で全国市区町村到達率97.2%、ならびに同2度以上到達率48.2%で、たまに「るるぶ金子」と呼ばれたりも。